診療部

DATE. 2018.12.25

それって認知症?

土屋病院 副院長 阿部正幸

 皆さん、今年はどんな1年でしたか? そろそろ「年忘れ」と称し忘年会や暮れの準備で忙しくなってきましたね。今日は物忘れ、認知症の話をしたいと思います。

 最近、なにかと話題の「認知症」。毎日、新聞や雑誌テレビで話題にならない日はないくらいです。その認知症とまちがえられてしまう事が多い状態や病気がたくさんあるのをご存知ですか? 宴会明けのお父さんの事ではないですからね(笑)

「言葉が突然でなくなった」
 まずは一番怖い話から。ある時、外来の終了間際に一件の相談がありました。
 「2日前に突然認知症になった人を診てほしい」
 私の頭の中は「????」と嫌な予感でいっぱいになりました。そもそも、認知症は突然発症する事はなく、ゆるやかに進行し「いつから」なんてはっきり言えないものだからです。症状を聞いてみると「言葉が出なくなった」との事でした。頭部のMRIをとってみたら「脳梗塞」でした。
 似たようなケースでは、「一時的に言葉が出なくなるが、すぐに治る」という事を繰り返しているという相談もありました。こちらはけいれんが起こらないタイプの「てんかん」でした。
 突然症状が出た言葉の障害、記憶の障害では本物の認知症である事はほとんどありません。

「ここ1ヵ月くらいでどんどん物忘れがすすんでいる」
 
こんな紹介を受ける事もあります。こういった場合も認知症の進行である事はほとんどありません。頭部のMRIやCT検査に加えて「内服薬」「既往歴」「飲酒歴」「生活環境の変化」を調べ血液検査をする事になります。皆さんは病気の治療のために飲んでいるお薬で認知症のような症状が出る事があるのをご存知ですか?

「薬剤起因性老年症候群」
 高齢になると、肝臓や腎臓、脳の働きが落ちてきて、飲んでいるお薬が体にたまり易くなります。すると、普通は出ないような副作用の症状が出る事があるんです。幻覚や物忘れ、尿失禁等が出る事もあるんです。意外に多いのは、これからの季節にお世話になる事が多い「風邪薬」です。おかしな症状が出た時には風邪薬を中止してみてください。他にも「H2遮断薬」という種類の胃薬や「睡眠薬や安定剤」、「過活動膀胱の治療薬」、「抗うつ薬」「鎮痛剤」でも出る事があります。たくさんの薬を飲み合わせていると相互作用でこれらの薬以外でも出る事もあるんですよ。そうそう「アルコール」も脳の働きを落とし、薬との飲み合わせも良くないですから、物忘れが嫌な方は騙されたと思って是非断酒してみてくださいね。

「さあ歩こう!」
 
最後に、認知症を予防するにはどうしたらいいのかを考えてみます。様々な方法が提案されていますが、一番手軽なのは「歩くこと」だと思います。歩く事によって脳の血行がよくなって活動性があがります。脳の働きが確実に改善するという報告はたくさんあって、さらに認知症に限らずメンタルにはいい影響ばかりです。私たちの病院でリハビリに力を入れているのにはこういった理由もあるんです。
 では、歩けない方はどうしたらいいか? あきらめる必要はありません。実は、皮膚をさすったり、関節を動かすなどの刺激でも脳はかなり活性化するんです。また、テレビやラジオ、読書や会話でも効果が期待できます。

 「最後に」
 
普段からの健康管理はとても大切で、体の病気があると認知症のような症状が出る事もあります。また栄養の偏りも原因になる事があります。薬に頼りすぎず、普段から運動やバランスのよい食事をこころがけ、定期的に健康診断を受ける事が大切ではないでしょうか? そして不安があれば是非ご相談ください

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